「了……父さんと母さんを宜しくな」



彼は、そう言ってポンと奈々子の肩を叩いた。



パッと奈々子の体がそこから、消える。



「えっ?」



「大丈夫、あの子は家に戻したから…」



彼は、そう言ってソリに乗り込む。



「まだ、仕事が残ってるんだ…またな」



シャンと鈴が鳴る音とともに兄貴の乗っているソリが動きだす。



「兄貴っ!待って!愛子さんの事は、どうすんだよっ」



俺の言葉が終わる前に兄貴のソリは俺の前から消えた。



「兄貴…」



(俺は、思いだしたよ…なんであんなにも愛子さんの事が気になっていたのか…



兄貴…愛子さんに会いに来たんだろ?)



俺の想いは清々しい青空の中にはかなく消えて行った。