「………あれ?どうしたの、そのねこじゃらし?」
見れば、小さな口に数本のねこじゃらしをくわえている。
それを聞くと、ゆいのはその場でねこじゃらしをぱっ、と離し、
『花束』
と人間の言葉で一言、答えた。

あたしがゆいのを信頼する理由の、一つ。
あたしとゆいのは、何故だかわからないけれど言葉を交わすことができる。
これはあたしたち二人(?)限定で、ほかの動物と話すことはできない。
ゆいのと言葉を交わせるせいか、あたしはよく動物に嫌われるというオプション付きだが。
まあ、ぶっちゃければ他の動物なんかどうでもよくて、ゆいのさえいればどうだっていいのだ。

「花束って…ねこじゃらしって花だっけ?」
『いいの、あたしが花束だって言えば花束なんだから。小さいけれど、葉月、あなたに贈り物』
………ねこじゃらしをもらってどうしろと?
でもゆいのからの贈り物だし、ありがたくいただくとします。
「なあにその自分中心の考え方!…ふふ、でもわざわざ外に出てまで、ありがとうね」
『どういたしまして。葉月が喜んでくれるなら外に行くくらいどうってことないわ』
…これだから、あたしはゆいのが大好きなのだ。優しい、母のようなこの感じ。