ぱたん。ドアが閉まる音が虚しく響く。
今、あのねこじゃらしたちはずっと保存できるよう、押し花にしている途中だ。
花、といえるかどうかはわからないのは置いといて。
目に映るのは、机に置いてあるねこじゃらしを挟んだ重い辞書。ゆいのが好きだった漫画で埋め尽くされた少しの本棚の隙間。よく一緒に寝て、潰してしまいそうになってゆいのに怒られたベット。

そして、本棚の隣に並ぶたんすに置かれるゆいのの生前の写真。

「………!!」

すべてが、ゆいのに関わるものだった。言葉にならないなにかが込み上げてくる。けれど涙がでることはなかった。泣けたらどんなに楽だろう、と思う。
ただ、しばらく呆然と立ち尽くした。

‐これから出会う、新たな命に、ほんの少しも気付けることもなく。