女王様御用達。

「本当、君たちはおもしろいねぇ」


一部始終をただ見ていただけの赤頭巾…もとい、ウリム王子はしげしげと呟く。


立派な剣を腰からぶら下げているが、一国の王子が国民に手を挙げることはよろしくないらしい。


一緒に逃げているが戦闘員ではない。


ポチは逃げるのについてくるのがやっと。


森の中、時折石や木の根に引っかかりながら彼は息を荒げていた。


一方レースさんは、自分の家の方を眺めていた。


黒々と大きく上がる煙。


森の木々に阻まれているが、少しだけ火らしきものも見える。




僕らが宿屋から外に脱出した時、すでに2階は火に染まっていた。



レースさんは逃げながらも、時折黒煙を振り返っていた。


本棚が燃えた時と違い、ちゃんと今度は意識がある。



でも父親との思い出がある宿屋が燃え、その心はかき乱されているに違いない。



「俺の物語も燃えたなぁ」


しんみりポチは呟く。


「物はいつか壊れよ。何だってね」


王子は笑う。



「大事な何かを失っても、次はそれに勝る何かを得ればそれでいいと思うよ」


なるほど。

いい考え方だ。



その言葉にレースさんはこちらを振り返った。



「先を急ぎましょう。デスト王子がお父様に泣きつかないうちに」



彼女の顔には強い意識が芽生えているように感じた。

後戻りは出来ない。



「そうですね」


僕は軽く立ち上がったが、実はふらりと目が回った。


剣にエネルギーを渡すといつもそう。

コイツ、調子乗って人のエネルギーを吸ってくる。


言っておくが、僕が死んだら契約しているお前も同じ運命をたどるんだからな。


剣と情けない自分の腕を睨んだ。