「アコさんはまだ、いらっしゃってないようですよ」
アコ。
そう言えば、その名を唱えたのは彼の声だった。
領主はふぃっと顔を背ける。
「そんなの聞いてない」
「そうですか」
にこにこにこにこ。
満面の笑みのフィヨルドさんと、始終機嫌悪そうな領主。
なんだかちぐはぐな組み合わせだなと思った。
大体、本当は高名過ぎる魔術師が、15の領主のお守りなんてする意図が私にはわからない。
普通に研究し、本を書いていた方が優雅な生活を送れただろうに。
特にルールさんは優秀な講師を国に呼ぶ仕組みを取り入れている。
国民の教育水準を上げ、より国が発展するようにと。
ルールさんが文通ほどの人間だ、声がかからないはずがないのに。
「おい、客人ども」
このガキ……いちいち態度がふてぶてしい。
「ルールはお前らにアコについて物語を書けと言ったんだろ」
私とペスは顔を見合わせる。
そうなの?
いや、私も名前までは聞いてないし。
「異国に来るのに……何も伝えられてないみたいですよ。アオイ様」
「ルールらしいといえばルールらしいが……お前らも大変だな」
……なんか同情されてしまった。

