女王様御用達。

右、左、左、右、左、左。

まるでそびえ立つ棚の迷路をくしゃみしながら進む。

私の城やルールさんの城に、こんな粗悪な状態で放置された部屋はない。

長時間いたら、繊細な私の肺が腐ってしまうかもしれない。

総警戒せざるおえない環境だ。

「あれ、今日はどこにいるんだろ」

フィヨルドさんは妙な事を言い出す。

「何ですって?」

「ああ、すみません。正直居場所わからないんですよ」

彼は特に悪びれる様子もなく頭を掻く。

「うちの図書館、こんな広さですし。それに、彼、自由人なので好きな場所で読書しているはずなのですが」

新しい場所見つけちゃったかなぁ。

彼は床に山盛りにされた本達を見下ろし首をかしげる。


……自分の主人の居場所が分からないなんて。


その時、私の鼻の中にホコリが入ってきた。


「グシュン!!」

「わあ汚ねぇ!!」


ペスがよろけて私から距離を取る。

床の方向へ伸びた鼻水を私は素早くハンカチで拭き取る。

何で私がこんな目に。


『アコ?』


棚の奥から、私たちとは違う男の声が聞こえた。

「いましたね」


フィヨルドさんは確実に場所が分かったらしく、我先に歩いていく。


「今日は、そこですか?ご主人様」

「……何だ、フィヨルドか」

彼は積み上げられた本の山で寝ころび、残念そうにため息をついた。

黒に近い藍色の髪。

深い深い海の底のような青い目に、フィヨルドさんの後からついてきた私たちは映し出される。

年齢は16から17くらいだろうか。

反抗的な目が端麗ながらも顔立ちの幼さを増しているようだった。


ほとんど外に出ていないのか、肌の色が白い。

白いシャツに通した子薄い体は華奢すぎた。

私はこのころの年には筋トレに励んでいたものだが、この人は化粧すれば女性として通るような美しさがある。