フィヨルドさんに案内され、本館から隣の別館へ。
やはり城と同じくらいあるそれは、膨大な量の本を扱う図書館だった。
入った途端くしゃみが出る。
「サギさんは、ホコリは苦手ですか?」
「ええ、まあ。くしゅん」
鼻水が止まらない。
本の上、床の隅。
綿埃がコロコロと転がっていた。
踏みしめる床も心なしかホコリが舞っている気がする。
「うちの主は読書中に邪魔をするなという方針でして。メイドもしかりなのです。最近は少し緩和されてきましたが」
「掃除はできないと?」
「パタパタと走る音がうるさいと、機嫌を損ねてしまうのです。気分屋なお人で」
フィヨルドさんは、苦笑する。
「気分を損ねてしまうと、公務の進行にモロに響くのですよ」
ペスはきょろきょろと見回しながら「へー」と相づちを打つ。
ぎっちり。
そんな表現が正しい本棚に敷き詰められた本。
本が壁になり、棚がドミノ倒しになったら……と考えただけでまず生きていれないだろうその本の量。
しまいには、部屋の隅や棚の上に雑然と本が並べてある。
「そこらへんに落ちている本も、彼にとっては使いやすいように整理しているらしいですよ」
「ああ、また読みやすいように……」
くすくすくす。
呟いたペスに、彼は首を振った。
「彼は、一度本を読めば大概の事は覚えてしまいます」
え?
「そこの床に落ちている本も、彼が棚から出して読んだものでしょう。脳内には入っているはずなのですが、『また読みやすいように』おいているようです」
……相当特殊な領主らしい。

