女王様御用達。


馬車の窓からは独特の紫の煙が見えた。

悪魔が巣くう体を灰まで焼くための魔術師の火がたかれたらしい。

私の膝に乗せた新聞には、彼女の記事は小さくしか載らなかった。

本当ならば、紙面一面を飾る大スキャンダル。

『女王騎士が悪魔崇拝者として墜ち、死刑』それは、少なくとも確実にいるアンチ女王派の人間には叩く材料になるいい素材。

しかし、その身分も伏せられ、ただ名前が載っただけ。

一面には、国一番の銀行で金を横領した有名頭取が消えたことが大きく出ていた。

確かに額はでかいが、金は回収された。




……普通なら、明らかに女王騎士の不祥事のほうがでかい事件なのだが。




彼女の処刑の早さといい、新聞といい。



どうやら女王が暗躍をしているらしい。


「変な煙だなぁ」


のほほんと、私の前に座っている男は呟く。

今回、私が見張らなければいけない男はあまりにみすぼらしかった。

黒と白が部分部分で分かれたマダラの髪。

いかにも庶民らしいGパンとTシャツ姿。

それも着古していて少し黄ばんで破れている。


学がなさそうなその表情で、立ち上る処刑の煙を見上げていた。




「処刑用の煙さ。悪魔を徹底的に焼くために数々の薬草を焼いている」

「へぇ」



特に自分たちの紹介もしないまま、……まあ、私の方は先に資料を見てこいつの事は把握しているが。

頭悪そうなその庶民は私の事よりも馬車の窓から見える煙の方に興味を示していた。

その煙が、まさか前の警護役のクリスタルの体を焼いたものとはまるで分かっていないだろう。

新聞や社会情勢にはまるで関心がないと資料には書いてあったから。

私も、そんな事を出して物事をややこしくする気はない。


男は、私の方に向き直る。