フォーク王子の目はあまりに冷静に物事を見つめていた。
それは、王位継承が始まってからずっと。
その首が、剣の刃に触れるその時も。
首が床にはねる。
その音を想像していたアタシは、その場面にいささか不自然さを覚えた。
『……何故逃げぬ?』
剣は、王子の首すれすれで止まっていた。
先端は傷つけていたかもしれない。
「僕は、君に首をはねて貰わないと困るんだ。死神さん」
やっと微笑んだその顔は、あまりに安らかだった。
『どういう意味だ?』
「僕はね、君が真の王として『ミア』を選んだその目は間違ってないと思うんだ」
『……?』
シュシは無言で無駄にかさばる分身たちをなぎ倒す。
「ミアはね。これまでずっとこの国に貢献してくれた。これからもきっとそれはオーノンにとっていい影響になると思う」
後数メートルがやたら長く感じる。
「ミアなら僕よりもずっとずっといい王様になれるよ。保証する。でも、ミアの境遇はあまり王様になるには複雑すぎてね。敵が多いんだ」
本物の騎士は吊されているミアを見上げる。
ミアは騎士を涙目で睨み付けていた。
「『真の王の妨害をする者は殺す』君に僕が殺されることで、他にミアに反対する奴はきっと怖がるでしょ?」
「何をおっしゃっているんですか!!王子!!」
「ミアがみんなに受け入れられるのなら、僕は喜んで首を上げるよ」
「馬鹿な事をおっしゃらないでください!!そんな恐怖政治、人がついてくるわけがありません!!」
王子はミアを見上げた。
「ミアなら、大丈夫だよ」
にこっと、そこで普段の王子が戻ってきたような気がした。
「それが僕がこの国にできる最大限のことだから」
そして白銀の騎士を見つめ直す。
「……だから、僕は王として確実に君に殺されなきゃいけないんだ」

