女王様御用達。


「……しかし、増えましたねぇ」


この緊迫した状況を、のんきな口調で評価する。

「つうか、こんな増えるんですか?」

「こっちが聞きたい。倒しても液体になってすぐ再生するし」

「こいつらは彼女の分身であって、分身ではないんです」


ん?

「正直俺もよくわかりません。ただ、本当の彼女自身は、この分身達に紛れて移動しています」


本物?


「そう。こいつらはほぼ偽物。本物が一体一体操っているだけ。だから動きは単調で鈍い」


彼は近づいて来た騎士を笑顔で蹴飛ばす。


「分身ではないってどういう事?」


ハチは聞く。


「だって、このうち一体は本物だもの」


彼は右、左と目線を動かす。


「……いろんな分身の中にまぎれてバラバラに動いて動きをくらまそうとしているけど、確実に2人の方に向かってますね」


王座では、槍を振り回し、棒立ちしているフォークを守るミアの姿があった。


落ち着いた姿が想像できないほど必死な形相だ。


すでに口から血を吹き出している。


「加勢に行く」


立ちはだかる騎士を睨み付け、アタシはそいつに槍を振るう。

そいつはまた液体のように溶け、アタシから少し距離をとった所で再生する。


それは、ミアへ行く最短距離の一直線上。


「ニアさん程度の『毒』は本物ならダメージを与えられるかもしれませんが、分身ですからそれは効かないに等しいんです」


毒?

アタシの横にシュシが立つ。


「まずは、ある程度おじゃまさん達を消しましょう。彼女が逃げる分身を消すんです」


彼は手袋をした手をポケットから出した。