女王様御用達。

あいつら、どうやってあのドアの奥に入ったんだ?


他の傍聴人達も見た奴らはいるようで、少しざわついている。


「それでは、これより戴冠の儀を行います」


ミアの声は凜と響き、そのざわつきは収まった。

白いローブを着た初老の司教が、古めかしく重みがありそうな冠を手に王座に続く階段を上がる。

幼いフォーク王子にはむやみやたらでかく、それでいて割と地味。


それでも、重みあるように感じるのはこの国を背負う者の証明だからだろうか。


王冠を受け取ろうと、固まった表情の王子も立ち上がる。

「神も貴方が国を治めることを祝福されていることでしょう」

「……ありがとうございます」



フォーク王子の頭に、司教が冠を載せるために天に掲げる。


祝福ムードはその一瞬だった。




『所詮、偽りの神に偽りの王冠よ』




その少女の低い声とともに聖歌隊の声が途切れた。



載せられるはずだった王冠は、王室の壁に突き立てられる。

銀色の羽根のような刃物が王冠の金属部まで破壊していた。



王子は目を見開いたまま、何が起こったか理解できてない。



ただ、自分の頭上に乗るはずだった王冠が忽然と消えた事が不思議。

そんな顔で、状況が状況だけに思考が追いついていないのだと思う。


司教が舞台の上に王子を置き、階段をパタパタ下りる。


通常、人を救う立場にある司教がいち早く逃げ出した事で、会場の空気は一変した。


人々が立ち上がり、王室の出入り口であるドアの前になだれ込む。