女王様御用達。


「……始まったかな」

舞台のミアが堂々としているせいで、兵士達があまりに落ち着いて見えるので、一見その始まりは見えにくい。

外の音も、国歌の反響で聞こえない。

だが、出入り口に続々と兵士が動いている。


……おそらく、来賓を逃がすための準備だ。

ミア達もミア達なりに、策を練っているようだ。

白銀の騎士の対処法を。

お陰で厳かな雰囲気は崩れない。



「なあハチ」

「はい?」




「……今、トイレに出たらまずい?」





周りには各国の代表が固まっている。

しかも、友好国の代表代理であり、ミアの姉として出席するアタシは観客の最前列として参加していた。


「何のためにリュウズの軍服を着ているんですか。目立ちますよ」


アタシはハチの燕尾服を見つめる。


「じゃあさ、お前、膀胱大爆発させろ。付き添ってこの部屋出るから」


「膀胱大爆発って何ですか。嫌ですよ。というか無理っすよ!!」


今すぐにでも出て行きたい衝動を、あくまで女王騎士という良心が止める。

ミアめ。



この配列、どうも奴が「余計な事をしないでね」というメッセージを感じざるおえない。


その時、王座の裏のドアがキィッと開いた。



「……あれ?」


きょとんとした顔で、女が顔を出す。

あの女、シュシと一緒にワイン飲んでた奴。

何であそこにいるんだ?

あの奥はこの王室から抜けないと入れないはずだ。


女は革手袋をした手に引っ張られ、奥に引っ込んだ。

シュシもいるらしい。


ミアは見逃す訳もなく、兵士へあごでそちらを指示する。



兵士達は静かに王子の休憩部屋へ続くそのドアの中に入っていく。


それからしばらくしても、そのドアからは兵士もシュシたちも出てこない。