「身内の恋愛事情は我がことのようにこっぱずかしいな」
あれからミアとは言葉少なに別れ、帰路についた。
まあ、あんなシーン見られたんだから、内心話しにくいだろ。
とはいえ、シュシを見つめる目は説明無しでもきつかったが。
「一番率先して見てたの、誰っすか」
ブドウジュースをずるずる飲みながら、ハチは何か言いたげだ。
「はーい」
アタシは手を挙げ、マスターを呼ぶ。
「ウイスキー、ロックで」
宿屋の小さなレストランで、飲む酒もうまい。
ルールに持ってかえらなければ、しばらく愚痴られるレベルだ。
アタシの隣にハチとシュシをはべらせ、深夜のレストランは貸し切り状態だった。
周りにオシャレなレストランもバーも多いからみんなそっちにいっちゃったらしい。
「あなた達は盗聴では飽きたらず、のぞき趣味までお持ちだとは」
シュシは20らしいのでいっぱしに酒を飲める。
しかもいくら飲んでもペース落ちないし、顔変わらないし。
強いな、こいつ。
「ふはは、貴様もその仲間だー」
と、隣のシュシに抱きつく。
「……ハチさん、この人どうにかなりませんか?」
「……どうにもなりません。酒臭い布団だと思ってあきらめてください」
シュシの皮手袋が私の二の腕を触る。
「?」
そのまま掴み、思いっきり抓る。
「いででででででででで!!」
「え?わあ?」
彼はアタシの二の腕を掴んだまま驚き、やっと離す。
「すみません、ごめんなさい」
……?
まるで体の一部が自分の意志と反して動いたような反応だった。
彼は目を細め、二の腕を掴んだ左手を患わしそうに見つめる。

