女王様御用達。

「あれ、……どうした?」

「……急に聞こえなった」

「人がいなくなっちゃったからじゃないですか?」



後ろからの声に、アタシとポチはゆっくりと振り向く。

笑顔でいつもの声の調子のシュシが、わざーとらしく壁を見つめつつ不思議そうに首をかしげていた。


「「……」」


バクンと心臓が強く鼓動した。

コイツいつの間にこの部屋に入ってきた?

つうか、いつの間にアタシの後ろに立っていた!?



黒い手袋でぺたぺた壁を触るシュシ。


「結構、壁薄いんですよね。この宿屋」


アタシは何を答えるべきか分からない。


「ええっと、何か……ごめんなさい」


ハチはその場に正座し、コップを床に置く。


「別にいいですよ」


彼はにこやかーに手を振る。


「こっちも、聞こえるようしてましたから」


「「!?」」


「ついでに、そっちの会話も聞こえてました」


アタシとハチはバツが悪く見つめ合う。

いつの間にかアタシもコップ置いて正座をはじめる。


「『お互い信用していないところから生まれるそれとは別の信頼』って、あると思いますよ」


これを笑顔で言うシュシ。


「さっき、お前の女の声がしてたんだけど」



「ああ、ラジオって文明の利器を貰ってたんです。他国の産物ですが、この国でも聞けたので。声が出る装置です」


これですよと、鉄の四角い塊を見せる。

カチリと塊の部位を動かすと、中から風変わりな歌が流れた。



「これ、歌以外にもいろんな番組があって、女性と男性が語り合うドラマを聞いてました」


にっこり。

あくまで自分じゃないよと主張したいらしい。

……見え透いた嘘だけにむかつく。