女王様御用達。

壁に耳あり。

アタシとハチはコップを壁につけて、それを耳に当てる。



『……なんで、あんな女の言うことを素直に聞いちゃうわけ?』


本当だ。

ちょっと風俗の接客のような甘えた声がする。


『確かに彼女の立場は都合がいい。城に入るのに素性を必要以上に調べられることなく、新王に、シュラに近づける』


心なしか、アタシ達にする陽気な声よりも幾分低いシュシの声。

シュラって何だ??

ハチに目で訴えるとシャツをめくりあげ、ズボンと腹の間からノートを取り出しそれをメモする。


『とかいって、あの年増目当てだったりして』

『熟女趣味はないよ』



誰・が・熟・女・だ!!


壁を破壊したくなる衝動を必死で押さえる。


『即位式が一週間後。普段は小出しに存在感を主張しつつも、神の存在を知らしめたいあいつが王の首を狙うにはそこへんだろう』


『ワンパターンだもんね。あの詐欺師』

詐欺師。

女は白銀の騎士をさくっと詐欺師と言い切ったようだ。


『とにかく時間がないんだ。あの女王騎士が多少罠を張っていても利用するしかない』

『はめられたら?』

『食べていいよ』


……食べていいよ?

ひょっとして、この女。

ハチが恐怖におののいた顔でこっちを見つめる。


『やだぁ。アタシ、女嫌い』

『出たな、食わず嫌い。じゃあ、横にいたおまけみたいなマダラ君でも』


俺?、ねえ、俺?

ハチが目で訴えてくる。


『あの子は駄目』

『嫌いじゃなくて、駄目なんだな』

『だってあの子は』


だってあの子は?

急に会話が途切れる。

少し部屋の中で動く音が聞こえたが、それも消えていく。