女王様御用達。

「悪魔と契約した男」

宿屋はアタシの部屋の隣に住まわせた。

同じくアタシの隣であるハチは彼を警戒していた。

まあ、当たり前だけど。


だからアタシの部屋に来て、愚痴こぼす。

プラスチックの机の高さが椅子にちょうどいいので、そこに座りながら彼と対峙した。



「信用出来るんですか?」

「お互いに都合がいいだろ。白銀の騎士を止めるという目的は一緒だし」

「でも、シュシが近くにいると倒れる人もいるし」


シュシは彼が名乗った名前。

もっとも本名かどうかなんて知らないが、彼を指す名があればそれにこしたことはない。

悪魔に関係がある以上、必要以上にこちらも関わりたくはないし。



資料によると、ハチは魔法系の才能にことごとく恵まれていない。

だからこそ、不安なんだろう。

よく分からない力を、それも一般的には手を出してはいけない力を使う男。


常にニコニコしていて、その邪悪さを全く感じさせないところがさらに不気味。


「人がしてはいけない事をした、そこが引っかかってる?」

「まあ……」

「15歳でドスケベエロ本書いて法律犯したお前も似たようなもんじゃん」


ハチは一瞬ぐっとひるんだ。


しかし自分の胸を叩く。


「き、危険度が全然ちがうでしょ!!俺、無害!!」

「無能が正解だろ。お前一人じゃ自分の身さえ守れないくせに」

「うっ」


とはいえ、ハチが言うのも一理ある。


あいつの戦闘能力は未知数。

だが、アタシの動き方を見切り、それを同じレベルに合わせて対応してきた奴には手練れと相手している感覚を受けた。

……他の若い女王騎士とは違う、年齢相応ではない熟成された技術。

まるで武術の師匠のように分析し、受けて流した。

……こちらもそれ用の舞術で……もちろん戦闘にも利用されるものだが、彼の前では完璧に彼と対に踊る舞術になりはてた。

果たしてお互い本気で戦ったとき、奴を止められるかどうか。

勝つのは目的ではない。

奴の動きを止めるので精一杯だと思う。