なんだかんだいいながらも、ハチは与えられたリンゴを囓っていた。
シャリ、シャリ。
部屋を出て行くミアの残像にとらわれているアタシに、その音だけが響いた。
「王子が、言ってました」
ハチはアタシに背を向け呟く。
「酒場裏での騎士との戦闘で、白銀の騎士が出たことが町で話題になっているそうです」
「……で?」
「その闘いの中にいた人間で、白銀の騎士に手を出したにもかかわらず無傷で生き延びた女性……つまりミアさんが選ばれた王なのではないかと知れ渡っちゃったみたいで」
確かに。
あの場であいつにケンカ売っていたのはアタシとミア。
確かに白銀の騎士はミアに手を出そうとはしなかった。
「王子は童話を鵜呑みにするなと情報操作をしているらしいけど」
「……けど?」
「今度は、王子を国王にしたい人間がミアさんの命を狙っているみたいで」
ハチはため息ついた。
「ニアさんが意識不明の時に二度、そして最近一度王子の側近の兵士がニアさんを襲撃したそうです」
「そっか」
凄くナチュラルに理解が出来る。
ミアさえいなくなれば、神とやらが逆指名した新王はいなくなる。
そうなった場合どうなるかは分からないが、とりあえず白銀の騎士が描いている計画は狂わすことが出来る。
また、元々王の妾役であるミアを快く思わない人間もやはり多いのだろう。
暗殺という大罪を犯すほど、フォーク王子を慕っているならなおさらだ。
「もっとも、返り討ちにしたそうですけど。……でも、相当つかれているんだと思いますよ。ミアさん」
ミアもその兵士も王子を守りたい事は変わりない。
目的はみんな同じなのに。
王子を守りたい、それだけなのに。
目的が同じだからこそ、あまりに不毛な争いだ。
「お前に愚痴こぼすぐらいだ。王子も相当きてるな」
「ええ。最近倒れることが多いって」
ハチはゴミ箱にリンゴの芯を放る。

