女王様御用達。

「ちょっと、寒くない?」

「冬じゃあるまいしな」

「クーラーの温度を上げてよ」


酔っぱらいが店員に抗議する中、アタシは人混みを縫って外を目指す。


確かに、急に冷え込んだ。

しかしこれはおそらくだが。


「……ミア」

……キレてたからな。


外に飛び出すと、地面でもがいている男がいた。




地面に氷が張り、一面がアイスリンク場化してる。


また……これは大胆な。

あの子、普段はおとなしいくせに機嫌悪いときは何しでかすかわかったもんじゃないからなぁ。


「おっさん、助けてやるからちょっと止まれ」

もがいてた酔っぱらいは、ピタリと止まる。


人差し指と中指をくっつけ、大きく振ると、爪から赤色の炎が燃え上がる。


そのままおっさんの足場に指をくっつけると、おっさんの回りの氷だけが砕けた。


「ありがとう」


「凍傷にならないように暖めとけ。あと、しばらく誰も酒場から出すな」

ちゃんと聞こえたかどうか分からないが、彼は一目産に酒場へ戻っていった。


両手から炎を出し、夜の空気にそれを放る。


火の玉は揺らめきながら空を飛び、照明となる。


ミアの姿はない。


浮かび上がる氷には、二本の懐かしい線が入っていた。


「……げ」


やばいな。


相当遠くに行った可能性がある。