「彼女に会ったのは、2週間前のことなの」
そこそこ世間話に花が咲き、散ったところでミアはそう切り出した。
「王室裏のあの廊下でね。その時王子の部屋の警護役が誰もいなくて、彼女が一人廊下にいたの」
「……彼女?」
「女の子が正しいかな。年齢は小柄な15歳くらい。髪は生え際から足下までに白からピンクに変わる色をしてた。前髪は揃えてて、後髪は地面につくほど長けど、それでいて一切汚れていないの」
ん?とハチは首をひねると、ミアは続けた。
「もし外から入ってきたなら、そんな髪をしていれば地面のゴミを引きずって多少ホコリっぽくなるかと」
「なるほど」
「彼女はむしろ、穢れを知らない『神聖な存在』を思わせたの」
「神聖な存在……ねぇ」
「そう、言うなれば神のような。あの暗い廊下が彼女中心に明るくなっているように見えたの」
神様は見たことは無いし、信じる気も無いけど。
「彼女は私にこう言ったの。『我の冠を受け取りなさい』って。つり目の銀色の瞳でこちらを見つめてね」
「ピンクのやたら長い髪に、つり目の銀色の瞳っと」
いつの間にかハチがメモを始めている。
「その子は手から金色の王冠を出して、『次のこの国の王はお前だ』と、言われたの」
昔読んだ物語通りだ。
もっとも、王冠を渡しに来るのは白銀の騎士で、少女ではない。
だからそこら辺がちょっと違っているのが気になるが。
「彼女が偶然城に迷い込んで悪戯していると考えられないのは明か。そして、彼女が数歩先に歩けば王子の部屋という状態だった」
「…」
「もし、ミアが受け取れば、新王の障害である今の王子の身が危なくなる」
ミアは重々しく頷いた。
「フォーク王子は、その体調がすぐれないばかりに国王への即位式が遅れているだけで、ほぼ国王に等しい存在です」

