『お姉ちゃん、私、女王になれないかもしれない』
彼女は最終試験前の夜にそう泣いた。
『あの、ルールって子には勝てないよ』
『まだ、戦ってないじゃない』
『あの子は強い、実力とかまだ分からないけどそんな気がするの』
ミアはそんなよく分からないことを言っていた。
それまで彼女はどれだけ死体を見ても気丈に振る舞っていた。
しかし、その夜だけは違った。
対戦相手の一人に異様におびえていた。
『あの子に勝てる気がしないの』
『その子に当たるとは限らないじゃない。勝ち抜き戦は抽選でしょ?当たる確率は低いし、アタシが倒すから大丈夫』
彼女は首を振った。
『多分、あの子が女王になる』
何故かミアは確信を持っていた。
『大丈夫だって』
震えるミアに私は答える。
『……あの子は私が殺すから』
しかし、あっという間に首に剣を突きつけられたのはアタシの方だった。
第一回戦で、彼女は機械のような精密さでアタシの動きを読んできた。
父の方針で、戦闘術はわりと囓っていたと思っていた。
しかし、若干12歳の彼女は、20の私の動きをあっという間に封じた。
彼女の紫の目が獣のような目はいつまでも焼き付いて離れない。
「皆様、オーノンの国に到着しました。お忘れ物がないようご注意下さい。本日はご乗船下さりありがとうございました」
船内放送でアタシはやっと起きた。
酒のボトルを抱いたまま寝ていて、部屋中がアルコール臭がする。
「……うう、頭いたい」
酒をやりすぎたか。
ハチに女王選抜の話をしたせいか、懐かしい夢を見てしまった。
だけどそれは、アタシが同情されて命を救われたという悪夢でしかない。

