そのうち、彼が書いた童話が3冊分提出されてきた。
1つはシルルクが代々行っていた差別を扱っていたこと中心。
最後にレースが恐ろしいバケモノになり、おとしめた王子に復讐するという話し。
ほぼ事実に忠実な展開。
もう一つは国に焦点を当てた話。
国民がバケモノバケモノと罵っていじめていたが、彼女が行方不明になることで恐怖におののくという内容。
これも未来的に事実に忠実になるだろう。
そして最後はバケモノと罵られ闘いながらも、どうにか町の人たちと理解し合い、その偏見を無くしながら生きていく。
そして王子様に魅入られて結婚する…という大嘘。
だが、ポチが願う一番の内容なのだろう。
「いっぱい書きましたね。彼」
リュウズに帰ってから一週間。
それで小説一冊分仕上げてきた。
シルルクではほとんど進まなかったのに。
そして、顔の判別も出来ないはずの人間が、ノートに挿絵まで描いている。
「まあ、どれも表現が幼稚だが、話のテンポと人間の感情の生々しさは評価していいかもな」
女王も、彼の原稿に目を通し、そして机に置く。
「好きなものを選べだと」
「どれにするのですか?」
「もちろん、教訓的なものが一番強いバケモノの逆襲のやつだ。一番臨場感もあるしな」
……まあ、たしかに。
体験したことだから一番良く書けているような気がする。
「しかし、奴が最初に出してきたのはこの平和ボケした作品だったがな」
女王は唯一ハッピーエンドとなるノートを見せた。
「『俺は、物語の中だけでも彼女をバケモノとして扱いたくない』」
彼女はポチの声真似をする。
「『物語の中だけでも彼女に幸せになって欲しい。俺が出来るのは物語の中だけでも幸せに彼女を描く事だけです』、あいつはこの私に生意気にもそう食いかかってきた」
僕は苦笑した。
よくもまあ、女王相手と分かっていながら。
あの権力に弱い犬が。

