なんで、僕はレースさんに声をかけられないのだろう。
なんで、僕はこんなところで倒れているんだろう。
なんで、僕は動けないのだろう。
僕はなんて無力なんだろう。
僕はその光景に置かれた自分をあまりに腹立たしく思えた。
彼女はゆっくりと立ち上がり、国境とは間逆の町の方を眺めた。
「もうすぐ、国王の軍がきます」
彼女が何を感じ物を言っているかわかない。
そんな気配はまるでないからだ。
「さようなら」
彼女はポチと僕に残念そうに笑いかけると、倒れたウリム王子の右足を掴んだ。
僕らの回りを囲んでいた20人ほどの保護色の兵士達は、レースさんに距離を取る。
その荷物をずるずる引きずりながら、目の前の国境と別方向…森の奥に戻っていく。
「……レースさん!!」
やっと出た僕の声に、彼女は振り向くことも、足を止めることもなかった。
ただまっすぐ森の中に消えていった。

