女王様御用達。

その顔はあまりにも切なくて。

僕は必死で彼女を止めようとした。


これから彼女が何をするか分からない。

でも、人間を放棄しようとする彼女を止めなきゃならない。



でも口は動かない。


恐怖?


何で、レースさんに恐怖する必要がある?

あんなに一緒に、過ごしてきたじゃないか。


彼女の顔はとても辛そうだ。


まともに見えなくて視線を落とした先には苦痛に歪んだ王子の顔。



なんて顔をしているんだ。



彼女は僕に小さく微笑み、ポチにもその顔を向ける。


止めなきゃ。


レースさんを止めなきゃ。



なんで口が動かない!!


口が動かないなら。


僕は剣に力を込めるが、何も反応しない。

薄くなった僕のエネルギーを使ってまで、この剣は戦えない、そう言いたいらしい。



くそ!!








「あなたは、人間です」








ポチはすっと、その言葉を口にした。

真剣な表情で、彼女に優しく繰り返した。






「レースさんは最初から人間で、優しい人で」





ポチは首を振って答える。






「バケモノなんかにはなれません。絶対に!!」





彼女は王子の横に膝を落とした。




レースさんは目からポロポロ涙を流し、自分の体を抱いて。

嗚咽を漏らし、うずくまる。


「……あり…とう、ありがとうございます」



まるでポチに深々と土下座をするようにして。




同じく泣き出しそうなポチに、彼女はお礼の言葉を繰り返した。