「ねえ、王子様?」
耳元で囁く。
「バケモノになってみませんか?」
「……何を」
「三百年前、人間からバケモノになったシルルという女がいるでしょう?同じ方法でなれるのですよ」
ガラスのような瞳が王子を写す。
「でも、どうせなら。物語に忠実なバケモノになってもらいましょうか?」
そして、自分の頭を首に沈ませた。
「わわわああああああああああああああああああ!!」
耳をふさぎたくなるような声に、木々に止まっていた鳥たちが一斉に飛び立つ。
レースさんが顔を離し、手をほどくと、彼の体はどさっと地面に倒れ込んだ。
僕の方を向いたその顔は、恐怖に歪み、目を見開いたまま口を開けていた。
絶叫したそのままの顔。
彼女は冷たく彼を見下ろしていた。
口は赤い色で染まり、彼の首に力一杯噛みついたのが分かった。
そしてその目は僕にゆっくりと向けられる。

