女王様御用達。

王子は振り向かない。

だけど、目の玉を出来るだけうごかして、その後ろにいる人物が誰か当てようとしていた。

小柄なその体は、王子の体でほぼ隠れていた。


しかし、ウエーブのかかった金色の髪はうっすらと見えていた。


足下で、点々と血がしたたり落ちていた。


ポチの方向を見ると、地面に座り込み驚いた表情で尻餅ついている。


レースさんが倒れていた場所には大きな血だまりが残り、王子の背後まで続いていた。






「……レース?」







「はい。王子様」






彼女は明るく答えた。


何気なく道ばたで王子に会ったかのように。


何も無かったかのように。


しかし、地面に落ちる血はそれと相反していた。


「お前、生きていたのか?」


「実は、胸にトマトを隠してて」




白い手は、力強く王子の腕を掴んだ。





「なんて……そんなわけ、ないでしょう?」





そのトーンは、あまりに低い。

いつか僕が『レースさんは何者か』と葛藤していたときに来た彼女の声だ。




「貴方の銃弾は、ちゃんと私の心臓を貫通しましたよ」





「じゃあ、なんでお前は……動ける」




うふふふふ。

何を今更。

彼女は軽く笑った。






「だって、私はバケモノですもの」