知らない天井。
知らないベッド。
知らないパンツの知らない男。
それに抱かれる知らない私。
一夜限りのカラダ航海。
「イっていい?」
知らない男が私の上から囁いた。
私は無言で頷く。
数秒後、男は大きく息を吐くと私の体に倒れこみ、そのまま眠りについた。
「そのまま寝ないでよ。」
文句を言いながら男の体を横に退け、起き上がると、躊躇せずに男の体と自分の体を拭き、ゴミを捨て、裸のままベッドに入った。
さっきまで甘蜜色の声が満ちていたこの部屋は、今は男の寝息とエアコンの作動音しか聞こえない。
それが不思議と心地よくて、このまま眠れそう。
そう思った矢先に男が寝返りを私目掛けてうってきた。
少々苛立ちを感じ、またもとの位置にお戻りいただこうと乱暴に足で押し戻した。
にもかかわらず、男は再度私目掛けて寝返りをうった。
私の睡眠を邪魔するとは、いい度胸だ。
少々どころでは済まない苛立ちを抗おうと、私は面白いイタズラをすることにした。
鞄を漁って油性ペンを取り出すと、布団を退けて、あられもない体制で眠っている男の大事なところにぞうさんの絵を描いてあげた。
皆さんもご存知、某人気アニメの主人公のアレである。
これでこの男も人気者になれるかと思いきや、実際やってみるとただの変態だ。
まあ、いいや。
トイレに行った時に、せいぜい驚くがいい。
お陰ですっきりした心持になると、間もなく私は意識を手放し、心地よい夢の中に沈んでいった。