「いいよ。」 手を繋いだまま、彼は言った。 いつもと同じ、柔らかな声で。 どこに、と聞かないところが、彼らしい。 温かくなってきた、繋いでいる方の手に軽く力をこめる。 今日で最後なのは、わかっていた。わかっていたけれど、それは何だかふわふわしていて、さっぱり現実味がなかった。 でも、 「いいよ。」と言った柔らかな声、繋いだ手の感触。 今日が、最後の帰り道だ。 ずっと前から、決めていたこと。 それを彼に伝えるために、私は彼の手を握りしめる。 ここで言うと、 決めていた。