「新曲だ。」



出来上がったばかりの譜面を私たちに見せながら、にやりと武弘が笑う。



武弘は楽器という楽器はほとんど弾きこなす。
楽曲作りには、ほとんどシンセサイザーだけれど。



彼の作る曲を演るのは、これで5曲目だ。
彼自身が作詞まで手掛ける時もあれば、次の練習日までに考えてこい、と私に作詞をさせることもある。



この曲は、作詞まで完成されたものだった。



彼の作る曲は、ロックのテイストを思わせるものが多いが、どことなく寂しいような切ないような雰囲気がある。



シンセサイザーで作られた音を聞いている時にはそれほどでもないが、実際に全員で音を造り出すと、それはたちまちブルーの色をまとう。



明け方近くの、澄みわたったブルー。



武弘の曲は、いつもそんな感じがする。




手の中ある、温かい缶入りのココアを飲む。




季節は、冬になっていた。