あいた口がふさがらない。


そんな気分で広々としたスタジオの真ん中に立つ。



と、ドラムの音が唐突に鳴り出した。


振り返ると、学ランの上を脱いだ敬太――今日から、敬太って呼んでよ――が、嬉しそうにスティックを握っていた。


隣には、ブレザー、その中の白いカッターシャツまで脱ぎ、黒のTシャツ姿になった武弘――俺は武弘――が、ギターを肩にかけたところだった。


ここまで歩く道中、敬太が私に、武弘の家が持ってるスタジオがあって、そこでいつも練習するんだ、と話して聞かせた。

敬太は、明るい性格のようで、急にメンバーに加わった私に対しても、積極的に話しかける。


ギターの音が、アンプを通して響く。

武弘は、どうやらお金持ちのお坊ちゃんのようだ。
ただ、それを鼻にかける様子は全くなく、それどころかひどく言葉少なで、必要なことしか口にしない。



ギターを弾いている時にだけ、皮肉っぽい顔付きが少年のようになる。



「メンバーはこれだけなの?」



ここに来て初めて、武弘に聞いてみた。



「あぁ。」



やっぱり、言葉少なだ。



初めて関わるこの2人のメンバー。


何故だかわからないが、
この2人の距離感――明るく積極的な敬太、真っ直ぐな視線で言葉少なの武弘――は、奇妙に心地よい、と感じていた。