変な奴。
でも、おもしろい。



俺の目を見ながら、校門の前だと言うのに歌いきった。たいしたもんだ。



「なるほど。嘘じゃねぇな。なぁ、お前…」



「田辺雪音。」



言いかけたところを遮り、挑むような視線をぶつけてくる。



おもしろい。



「俺は、中沢武弘。なぁ、雪音。俺たちと、音楽やらないか?」



そう言うと、雪音は視線をぶつけたまま、


「音楽…?」


とつぶやき、制服の喉元を握りしめた。



こいつ、雪音の声は本物だ。人を惹き付ける響き。
凛とした、真っ直ぐな声。こんな声が欲しかった。



雪音の返事を待ちながら、それでも何故か、断られる気がしなかった。
必ず返ってくるYESを、待っているような気がする。



そして、それは的中した。



「いいよ」



真っ直ぐな、挑むような視線を向け、凛とした声で、雪音が答えた。