『‥愛~??』


『もう少し‥もう少し、このままでいさせて‥』

聡は何も言わずに、私の頭をよしよしって撫でていてくれた。

私はだんだん落ち着きを取り戻していた。




『愛、お父さんはまだ家にいる?』


『いるけど‥』

聡は私の手を引っ張って、家の中に入っていった。


『失礼します。』

そう言って、居間に入り正座をした。


『今日は、約束を守ることが出来ずに本当にすみませんでした。』

聡は深々とお辞儀をした。


『いいのよ。仕事なら仕方がないじゃない。』


『で、でも‥』


すると、お父さんが居間にやってきた。

『君!!愛と仕事どっちが大切なんだ!?』


お父さんは凄い剣幕で怒鳴った。


『そ、それは‥』


聡は悩んだ挙句、ある結論にたどり着いた。


『もちろん、愛さんです。でも‥仕事というか‥利用者は大切です。僕にとっては、大切な家族のようなものですから。
今日は、本当にすみませんでした』

そう言ってもう一度頭を下げた。


お父さんはそれだけ聞いて部屋に戻っていった。


『お、お父さん‥』


『いつも本当にごめんなさいね‥』


『いえ。俺が悪いんで‥。今日はこれで失礼します』


『あら?ゆっくりしていけばいいのに』

聡は振り向いて笑顔で「ありがとうございます」と言って一人で出て行ってしまった。