その後、私はやることがなかったので部屋で音楽を聴いていた。
ランダムに流れるように設定されていたので、今の気分に合わない様な音楽も流れていた。今の私には、ただ流れているだけで歌う気にもなれなかった。


どのくらい聞いたんだろう‥

ある時、思い出の一曲が流れてきた。それは‥


私の大好きな曲だった。
これを聴くと皆が祝ってくれた今年の誕生日を思い出す。これを聴くと聡の事を思い出す。これを聴くと‥


どんどん涙が溢れて来た。
私ってこんなに涙腺弱かったっけ??


聡に逢いたい‥逢いたいよ‥

そう思っていると携帯が鳴った。私は一呼吸してから電話に出た。


『梅沢です』と。

ディスプレーを見る前に電話を取ったので、誰かの電話なのか確認しなかった。


『愛、いま家にいるか?』

この声は‥聡だ!!


『聞こえてるか?おーい、愛?』


『き、聞こえてるよ。今‥今は家だよ。』

私は泣きそうになっているのを必死で堪えた。


『今さ、愛の家の前に来てるんだけど‥出て来れる?』

思いもしない言葉に私は驚いた。


『私の家の前に?』


『おう。出てきてくれないかな〜?』

私は携帯をベッドに投げ捨てて、階段を駆け足で下りた。


「愛〜聞こえてる?今日、電波悪いのかな?愛〜愛‥」



『聡!!』

私は玄関の扉が開くのと同時に叫んで聡の胸に飛び込んだ。


『あれ?愛、携帯は?』


『携帯‥?部屋の中かな‥?』


『何だよ〜。じゃあ、さっき俺一人でしゃべってたのかよ?』


私は何を言いたいのか分からなかった。
でも、今はそれを聞くことより聡を肌で感じていたかった。