ガチャ

誰かが台所に続く扉を開けた。


『お父さん‥』

そう。台所に来たのはお父さんだった。
お父さんは無言で食器棚の下にある扉を開き、ビン取り出した。そして、それをカレーの中に大さじ3杯入れた。


『この味、お父さんが出していたの?』

私は驚いていた。


『そうなのよ。これは、お父さんしか知らない特殊なものなの。』


『へぇ~』

私は一人納得していた。お父さんって、変なところに力を入れる人だった。


『後は、蓋をして煮込むだけね。居間に行ってゆっくりしていましょう。』


『うん。聡行こう』

私は聡だけを引っ張って行こうとした。
聡は、お父さんの前で「御邪魔しています。」と、もう一度挨拶をしてお辞儀をして前を通った。


『礼儀正しい子ね』

お母さんは呟いたが、お父さんの返事はなかった。





私たちは、居間で小さい頃の家族の写真を見ていた。

『愛って変わってないな(笑)』


『そう?じゃあ、可愛いって事かな。私ね、小さい頃は「可愛い可愛い」って近所で有名だったらしいよ』


『近所だろ?だったら俺だって負けないぞ(笑)今度、写真見せてやろうか?実家だけど』


『見たい!!それに、聡のお父さんとお母さんにも逢いたいな‥挨拶行った時以来、伺ってないし』


『愛に逢いたいって言ってたから、時間が出来たら行くか?』


『うん。行く!!』


そんな話をしていると‥

『カレー出来たわよ』

お母さんの声が聞こえた。


『はぁ~い。今行く』

そう言って台所に戻った。