『死を撮る為に……』


『死を撮る…何ですかその理由は?』

男は紫煙を弛ませながら話を続けた。


話の始まりは以外に普通だった。

男は数年前まで、スクープ専門雑誌のカメラマンをしていた。
被写体は芸能界やスポーツ選手。または政治家など、読者がおよそ喜びそうな、いわゆるゴシップを担当していた。

男はそれで食べていける事を理解していた。何も考えず、何も感じずに。

いつもの様に車に身を沈めて、いつもと変わらない様な被写体を待って居る時の事だ。


冬の都会は、極地より冷えると誰かが言っていたように、ヒーターが利いた車の中でも凍えそうに寒かった。

今回の被写体は今は政治家になっている、著名な元スポーツ選手。自らの成功方法を本にし、TVや講演会に引張り凧。そして、女性関係も御盛んな奴だ。

在来たりで、むしろ定番なネタでもあった。
購買数を増やすには、色恋沙汰が一番良いと編集部は考える。

マンションに横付けした車の中で、長時間寒さと狭さに耐えていた身体が、
ギシリギシリと軋み始めたので、身体を伸そうと男はカメラを手に持って車から出た。

その時、目の前を黒い影が上から舞い降りた



『ドン!!グチャッ』