ズドンッ!。
鈍い音とともに土煙が上り。

タケルの身体も宙に舞い上がった!!

男はすぐに駆け寄る。

タケルの右足が付根あたりから無くなり、右腕も肘から下が無くなっていた。傷口から血が吹き出し始めている。

タケルは意識が戻り。すぐに起き上がろうと上半身を上げたが、男が押さ込んだ。
『痛!すいません僕ドジっちゃいました』タケルはまだ自分の状態に気付かず笑っていた。

男はすぐに止血の為、ヒモでタケルの脚と腕の根元をキツく縛った。
処置をしながら、男はゲリラの地雷だと分り、じきに奴等も来るだろうと考えた。

医者を目指していたタケルは、徐々に自身の状態を把握し始め、冷静に分析した。


【助からない】


心を落ち着かせる為か、タケルは男に語りかけた。
『ぼく…僕は、何だか凄く遠回りしちゃいました。けど、貴方と一緒に写真が撮れ…撮れて良かったです』

喋る度に血が溢れ出す。

『ああ、分かってる』男は言った。
タケルの状態は男にも明らかだった。


『いままで、貴方と多くの人の死を見てきました。見ましたが、僕は最後くらい、格好良く。死にたいと…』
無理に笑みを浮かべようとしていた。

男は、血の気が引いていくタケルの身体を支えながら聞き続けた。

『僕は…』タケルは声を震わせ、突然

『死にたくない!』

タケル泣き出し、絶叫した。

『嫌だ―!死にたくないよ!』
暴れるタケルを男は必死に抱き抱えた。

『まだ。まだやりたい事が、たくさん。たくさん有るんだ!僕はまだ生きていたい』

『生きて!僕はまだ、これからまだ。恐いよ。死にたくなぃょ』

『お願い助けて、誰か助けて下さぃ…お願いだからぁ…』

最後は嗚咽になり、ただ泣いてた。

男は初めて。本当に、初めての涙を流した。他人の為の涙を。

意識が薄れ、血の気が引いた顔でタケルは言った。

『ハァ、ハァ、僕を撮って下さい』
『貴方のカメラで僕を…ハァ、最後に僕の……死を。』

男は数秒、光の薄れたタケルの目を見つめ。

そっとタケルの身体を降ろし、カメラを構えた。
カシャ!カシャッ!
カシャッカシャ!

シャッターを切る音が。大きく大きく響き。
同時にゲリラの足音も近付いて来た。