その男は何かを見つめていた。

空には鳥も恥ずかしくなるような青天が広がり、男の周りの空気だけが存在を示すよう小刻みに震えていた。

男の手にはカメラが1台。しかし男はカメラを構えていない。ファインダーに微かに映る日の光が、胸にあたり動いていた。

その男は地と空の間を、何か期待と恐れ。そして、悦を感じているような目で見据えていた。

その時

タッタッタッ!

タッタッタッタン!

妙に乾いていて、尚かつ恐怖を感じさせる音が響いた。
男の足元、頭上の木に当たる音。耳をかすめる物体。

男はカメラを構えシャッターを切り始めた。

タッタッタッ!
カシャ!

タッタッ!
カシャ!カシャ!

乾いた音と乾いた音。その合間に、人の呻き声や怒号、そして断末魔。



男は戦場カメラマン。