【龍ちゃん…】


背後から掠れた声で桃が俺の名前を呼んだ。


『気を付けて帰れよ』

【…あのね、さっきは】

『いや、俺も悪かった。未遂だったしよかったな』


桃の言葉を遮り淡々と話す。


【いいよ…っ、また来るから!】

『来んな』


バタンと玄関のドアが閉まった。俺はペン入れ作業に戻る。もう少ししたらアシスタントがやって来るから急がないと。
桃の残り香が漂ってる部屋じゃやりづらいから窓を開けた。
もうすぐ夏も終わるな…


―fin―