だって今にも転覆しそうな船で旅に出るんだから
「嫌ならいいんじゃ。お前たちを置いて行くからな。」
あの優しそうな村長が急に態度が変わった。なんか強そうな村長にまるで生まれ変わったみたいに…。
「でもここまで来たからには戻れない。」
「そうね。」
「それじゃあみんな乗り込もう。」
僕たちは船に乗り込む。やっぱり転覆しそうな感じ。でもなぜか四人乗ると安定した。不思議に思った。
「安定した。」
「この船は四人乗ると安定するんじゃ。」
「それを早く言ってほしかったよ。」
リームさんが悔しそうに言い出した。
「ところで村長。ふとおもったんだけど。」
「なんじゃ?」
「帆(ほ)は?」
シーンとした空気に再びなった。
「なんか嫌な予感。」
「そうじゃ。漕いで行くんじゃ。」
「やっぱり…。」
一人ずつオールを持ち、掛け声と共にこぎ始める。
漕ぎながら周りの世界が向こうへと流れていく。そよ風が気持ちい。
「このまま真っ直ぐ行けばいいの?」
僕が聞く。
「そうみたいね。」
リームさんが答える。
「あれじゃ。」
村長が指差した場所には、島が見えてきた。
「あれが火の島?」
「そうだよ。あそこには火の島にしかない大きな山があるんだ。」
僕のお父さんが言った。