もしかしたら、この冒険は記憶に止めておいて、外には出さない方がいいのかも。
僕はそれっきり、ノートに書くのをやめた。
この世界と、みんなと冒険した事の思い出を自分の心に閉じておくことにした。その方がきっとみんなが喜ぶと思う。その方が。


あれから忘れていなければいいけれど。

ある記事を最近買い始めた雑誌で見つけた。
『大事なものは忘れない。それが人間の心。』
と、書かれていた。


そうかもしれない。
人間は大事なことは忘れない。
僕があの世界に来たことも覚えているはず。
白い雪がゆっくりと空から落ちてきた。

「あっ。雪だ。もうクリスマス。」
僕は言った。

あれから時は進んでいた。でも、お父さんはいたことになっていた。
そこが不思議な所だけど。
「お母さんに、お父さんにプレゼント。」

僕はちょっと楽しんでいた。あの世界も、そして、こっちの世界も。