俺様プリンセス【BL】

 曲が終わるのと同時に、ヒメはマイクをスタンドに戻した。

 照明が落とされて、ヒメにだけ、スポットライトが当たる。


 ヒメがゆっくりと両手を広げると、それを合図にまた演奏が始まった。
 

 さっきまでの2曲とは全然違う、バラード。

 静かな音が、ホールに響き渡る。


 両手でスタンドを握り締めたヒメは、目を閉じたまま唇に言葉を乗せる。



 瞬間――背筋が粟立つ。



 その歌詞が、曲が、ヒメの歌声が。


 一つの感情の波になって、押し寄せてくる。


 そんな、感覚。


 囚われる様な、錯覚。


 そして。


 目を開けたヒメの頬に、一筋の涙が零れた。

 スタンドに縋って、時折声を詰まらせながら、想いを込めて歌い上げる。


 曲と同時にライトがフェードアウトすると、一気に歓声が沸き起こった。