バイトやらなんやらを終え、アパートに帰ったのは21時を過ぎていた。

 部屋の扉を開けるとペタペタと足音が近付いてきて、


「おかえり」


 と不意に降ってきた声にびくりと躰を揺らす。


「……ただいま」


 帰ってきて「おかえり」とか言われたの、実家に行った時以来だ。

 ヒメが居ることを忘れていた訳ではないが、何だか複雑な心境になってんのはなぜだろう。

 きっと、わざわざヒメが玄関まで出てきた所為だ。

 出迎えるとか、新婚家庭じゃ無いんだし。