笑顔で部屋に入っていくヒメの髪は、赤からブルーブラックへと変わっていた。

 キレイな赤だったのに、とか思ったことは伏せておこう。

 玄関の鍵を掛け、短い廊下を抜けて部屋に入ると、ヒメが早速トランクを開けている。

 ぎゅうぎゅうに押し込められた服と、幾つかのアクセサリー、化粧品らしきボトルが見えた。


「女の子みたいな荷物だな」


 思わず口にすると、顔だけ振り返ってヒメはニッコリと笑む。


「オシャレと美容は欠かせねーんだぜ」


「偉そうに言うなよ」


「馬鹿に出来ねーんだって、こーゆーの」


 言って、姫は化粧水らしきボトルを俺の目の前に突き付けてくる。

 それは、男の俺でも知っているような、有名メーカーのロゴが入ってた。


「メンズ化粧品ってやつ?」


「ちげーよ。コレは普通に女の子も使ってる。色々試したんだけど、コレが一番良いみたいでさ……――」


 その後も乳液だとか何だとか、事細かにヒメが説明してくるもんだから、思わず聞き入ってしまった……。