この一週間、俺が折角用意した布団をヒメが使ったのは、一度だけだ。

 シングルベッドに男二人なんて狭苦しいだけなんだけど、断れなかった。

 携帯のアラームが鳴る前に目が覚めた俺は、背中越しに感じるヒメの体温に安堵感を憶えた。

 目が覚めたら、居なくなっているかも知れない、って思ったから。


 結局、あの後も色々話したけど、ヒメが納得出来る答えなんて見付からなくて。

 ヒメが頑固すぎる様な気もするけど……そこで意地を張ったところで朧さんがヒメの元に戻ってくる訳でも無ければ、バンドが解散しない訳でもない。

 とはいえ、仮に朧さんがヒメの元に帰ってきたとして、それで気が済むというかというと、そう上手くいく筈も無い。

 ヒメに残された選択肢は、ヒメにとって辛いものばかりじゃないか?

 いっそ、全てを放棄してしまえばいいのに、とも思う。

 でも、そんなこと、ヒメには言えない。