「――……おっせぇよ!」


 バイトを終えて帰ってきた俺は、アパートの階段を上がったところで思わず立ち止まる。


「……ヒメ……?」


 俺の部屋の前に。

 ヒメが座り込んでいた。


 黒いラバーソール。

 黒い細身のパンツ。

 黒いガーゼシャツ。

 黒く見える、髪。


 全身真っ黒なせいか、薄暗い通路でヒメの白い顔がぼうっと浮き上がって見える。