これで良かったんだ…。 莉央にとっても、俺にとっても。 そう、自分に言い聞かせながら、俺は慣れないネクタイを締めた。 「渡先生…」 指示された通り、体育館の入口の前で待っていたら、井上先生に話しかけられた。 ――4月1日。 まだ朝晩は風が冷たいが、昼間はかなり暖かくなった。 スーツ姿の井上先生は、顔中に流れ出す汗をハンカチで拭きながら俺の横に立った。