グラウンドで動く生徒達をボーっと眺めていた俺の横から、不意に声が聞こえた。




慌てて声の方を向くと、現国の井上先生が俺の隣のパイプ椅子に座って、吹きだし続ける汗をタオルで拭いていた。




スーツか柔道着姿の井上先生しか見たことなかった俺は、その大柄な身体にピチピチのTシャツを着て、上から黒いジャージを羽織っている井上先生に、妙な違和感を覚えた。





「あ…すみません。ちょっとボーっとしてました。」




ちゃんと井上先生の話を聞こうと、俺は体勢を変えた。




「いや…そんな、身構えてもらって話すようなことでもないんですけどね…」




…と遠慮しながらも、井上先生は話を始めた。