だから、せめて―――




好きになったことだけは後悔させないように…





彼女にそっと微笑みかけて、俺はその場を後にした。









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「いやあ、まさか見られていたなんて…。でもちゃんと断りましたからね。」





俺は動揺を隠すように、おどけた感じで井上先生に言った。




近くで扇風機がカラカラ回っているにもかかわらず、井上先生はその滴り落ちる汗をハンドタオルで拭いていた。




「私なんて、そんな夢みたいなことすら起こらないですよ?まあ、渡先生と見た目が全然違いますからね!」




そんなことを言いながら、また井上先生はガハガハと笑った。




「でも実際生徒と付き合うとなると、大変でしょうね。」