情けないその物言いに、俺は酷い怒りを覚えた。



「最悪だな…」

俺がそう吐き捨てると、おっさんはムキになったように顔を上げた。


「お前にわしの気持ちがわかるんか…!?」

「そんなもんわかりたくもない。

…けど、親が居ない子どもの気持ちならわかる」



言い様のない寂しさに襲われたり、心細くなったり…

父親がいないってだけで、虐められたり、腫れ物に触るような扱いをされたり……



だから、おっさんみたいに帰れる家があってそこに待ってる家族が…子どもがいるなら、…いつまでもこんな生活してないで帰ったほうがいいと思った…。



すると、


「あきらも、そう思う…」

と、膝の上に座っていた晶がそう声を上げた。


「…あきらもおとうさんいないから、すごくさみしいよ」


泣きそうな顔でそう訴える晶に、おっさんがぐっと唇を噛んだ。

そして、大きく息を吐いてから、こう言った



「せやな…。

ほんなら、いっちょ頑張ってみるわ…!」


「絵、また描くの…?」


「おう!また昔みたいに描けるようになる…!

…そんで、嫁さんと百合のとこに帰る」


おっさんは決意したようにそう言った。



「そういうわけで優斗、画材やらなんやら貸してくれへんか?」


おっさんの言葉に俺は頷いた。



画材だけじゃない。

なんだって協力しようって思えた…。