…このままじゃいけない。

そんな危機感を抱く。


俺はおっさんの前に腰を下ろし、おっさんに向かって話し掛けた…


「なぁ、おっさん…」

「んー?なんやー?」

「俺の部活の後輩に、有坂 百合って子が居るんだけど…」


俺がそう口にすると、おっさんの顔はみるみるうちに強張った。

そして、なんでもなさそうなふりをして「さよか」と小さく呟いた。


その様子からかなり動揺していることがわかる…。


「単刀直入に訊くけど、おっさんの娘だよな…?」

「……せやったら、なんやねん」

「心配してる」


おっさんに向かって俺はそうきっぱり言い放った。

あのユリがおっさんを心配しているかどうかは、実際わからない。…むしろ、あのテンションだから、本人は結構平気なのかもしれない。

そう思ったが、あえてそう口にはしない。


これをきっかけに、おっさんが自分の家に帰る気になればいいと思った。



「…せやかて、帰られへんやろ…今更…」

おっさんは俺の言葉に力なく吐き捨てた。

そして項垂れたままこう言葉を続けた…


「帰ったかて、迷惑掛けるだけや…。

もうなにも描かれへんねん…」

「…けど、俺の絵には描き加えてるだろ」

「それとこれとは別物やし…」