そのまま無事に学校を出て、神菜の言っていたケーキ屋に行った。
そして現在、ケーキを一緒に食べているわけだが…
目の前の彼女はなぜか無表情だった。
無表情でケーキをただ口に運んでいるだけの神菜。
その不可解な光景に俺は思わず神菜に向かって声を掛けた…
「…神菜、どうした…?」
声を掛けると、神菜はやっと表情を取り戻した。
そして、悲し気にこう呟いた…
「んー……、
なんて言うか…昔 通ってた保育所のこと思い出しちゃって…」
「は? 保育所??」
毎度のことながら、俺は間抜けな声を上げた。
それも仕方ないことだ。
ケーキを食べている途中で急に保育所のことなんて言い出されても、平然と出来る方がむしろおかしいだろう…。
「うん、 アスベストが大量に発見されちゃってさぁ…」
なんでアスベスト…?
神菜の考えることはまったくわからない。
「あぁ…
それは、将来的に発癌したら怖いな…」
と、俺は適当な言葉を返す。
すると神菜は溜め息混じりに「だよねー…」と呟いた。
「ベルリンの壁も、アスベストで出来てるらしいよ」
「…へぇ、ほんと?」
「いや、都市伝説だけど…」
「それだったら、嘘に決まってるじゃん…」
…って、あれ…?
なんでアスベストの話??
いつのまにか恋人らしからぬアスベストの会話に、店のおじさんがおかしなものを見るような目で俺たちを見ていた……。

